音程について②
こんばんは。
前回の投稿で、音程とは「座標」ではなく「距離」であることを書きました。
今回はそれが分かったところでどうすれば良いのか、という事を書こうかと思います。
ちなみに、今回書くことはすべて単音での前後関係における問題です。重音はまた違ってきますので、いずれ書きたいと思っています。
具体的な話の前に「ヴァイオリンを弾く」という行動を理解する必要があります。
皆さんはそこに何が起きているかご存知でしょうか?
1.出したい音のイメージをします。
2.イメージを実現させるための体の動きをイメージします。
3.動きのイメージを実現させるため、脳から体へ指令を出します。
4.脳からの指令の元、体が動きます。
5.体が動くことで左手では音程が作られ、右手で音が作られます。
(左手の指が置かれ、弓が動きます。)
6.実際に音として響きます。
7.自分で出した音を聴きます。
ざっとこんな感じでしょうか。脳内におけるイメージの割合が皆さんの思っているより多いのではないでしょうか?
我々が演奏しているとき、仮に完璧に演奏しているとすると(あり得ませんが、仮にです)、1と7が完全に一致していることになります。
自分のイメージした音を完璧に引き出している状態です。
ですが、実際は微妙に誤差が出続けるため、2~5の段階でそれぞれ調整をしながら弾いています。
音程の問題に戻ります。
「音程が悪い」という現象の原因はどこにあるでしょう?
1~5に原因がある場合、音階練習で解決できます。
これについては次回書こうと思います。
6に原因がある場合。その原因は職人さんが解決できます。
楽器の状態により正しい幅で抑えても音程が定まらないことがあります。楽器に不備がある場合、調整してもらうだけで解決できます。
7に原因がある場合。
これは、レッスンをしていても多い事例です。
「自分の音を聴けていない」状態です。
1と関連する問題なのですが…頭でイメージをする時、自分の頭の中でCDを再生している状態になっていることがあります。そして、それに酔ってしまっているのです。ちょっと言い方が悪いですが、聴けていないというのはそういう事です。
そうすると、自分で出した音を聴いているようで実は「脳内で再生した音を聴いて(自分が出している音だと勘違いして)いる」のです。
つまり、錯覚しているわけですね。
錯覚に陥っていると、
「一人だと弾けるのに、誰かと一緒だと弾けない(合わない)」
「録音するとまるで音程が違く聞こえる」
「思っていた通りに(自分が聴いていると思っている通りに)音が出ていない・撮れていない」
という状態になっていると思います。
ちなみに、本番直後に録音を聴いていてもなお錯覚しながら聴いていることがあります。
僕の学生時代がそうでした。「自分サイコーにできてる、でも成績に反映されないなぁ。」みたいな感じでした。
この状態だと脳のイメージと現実にかなりのギャップが生まれています。まず、それを少なくしていくことが大切です。
どうしたら良いか…というと
「自分の現実を受け入れること。」
これがスタートラインです。
本番(録音)の次の日、または3日後に改めて演奏を聴いてみてください。あれ?と思ったらチャンスです。
その後はまず、スケール(音階)を弾きましょう。そして録音をします。
1オクターブで結構です。チューナーは使ってはいけません。
録音を聴いて、自分で採点します。
どこが高いか、どこが低いか…
もう一度弾きます。もちろん、録音をします。
この作業を繰り返します。
この段階で、2つのタイプに分かれると思います。
1.正しい音程はわかるが、身体がついていってない(左手が正しい幅で抑えられてないor右手が安定していない)
2.そもそも、音程がわからない
ちなみに、僕は2.でした。気づいたときは大学院の1年生。進学して2か月目のことでした。
その後どうしたかというと…
レッスンは半年ほど音階のみ。小野アンナ音階教本をやり直しました。
本気で音程とは何か、ヴァイオリンを弾くとはどんなことなのかを考えながらの半年でした。
ここに気づかせてくれた先生に出会えたのは、僕の人生の大きな転機でした。良い先生というのは、自分の課題に自分で気付けさせてくれる先生だと思います。
僕も弟子・生徒にとってそんな先生でありたいと常々思っています。
話が逸れました。
でも、今回はここまでです。
ようやく、ヴァイオリンを弾くこと1~5の原因と合流することができました。
錯覚から抜け出した方、音程のイメージが無い方、思うように身体が動かない方、どの方々も以下の2つのどちらかです。
1.正しい音程はわかるが、身体がついていってない(左手が正しい幅で抑えられてないor右手が安定していない)
2.そもそも、音程がわからない
次回は、この2つの原因をどのように解決していくか、いよいよ具体的な練習方法を交えてお話ししていきます。
それでは、また。